今日(正確には昨日)23日の勤労感謝の日は、愛犬デイジーの
命日です。
12年半共に過ごし、5年前の晴れた朝、天国へ旅立ちました。
デイジーとの出会いは、不思議な縁でした。
どこにでもある様な家庭事情の末、私の実家の両親との6人での
和やかな2世帯同居が難しくなり、止む無く、実家近くの借家へ
親子4人慌てて転居しました。
長女が小学5年生、次女が幼稚園に入った春でした。
借家の隣家が、何度も泥棒に入られた、というお話を聞き、
防犯対策に、わんちゃんを飼う事にしました。
そこで、市政ニュースで知った、保健所の子犬交換会に参加しました。
当日、段ボールにバスタオルを敷いた簡易の籠を用意して、娘達の、
「お母さん可愛いわんちゃん貰ってきてね。」 という声援を受け、
意気揚々と出かけたのでした。
保健所の駐車場には、車3台分位の特設の囲いが出来ていました。
「わんちゃんとは、講義の後、この囲いの中で出会えるんだわ。」
と胸が高鳴りました。
飼い主の心得の講義を受け、やっとこれから交換会、という時、
「皆さんにお詫びがあります。 本日、交換会に子犬は一匹も
届いておりません。 私は長く担当していますが、このような事態は
初めてです。 申し訳ありませんが、次回の交換会に優先的に貰って
頂くという事でご了承ください。」 との係員のお話。
約50名程、2階の講義室に集まっておられた皆さんから、一斉に
大きな落胆の溜め息が聞こえて、中には、保健所の不手際を
なじっておられる方もいらっしゃいました。
私も意気消沈して帰宅。 次回の、子犬交換会で、最低50匹もの
子犬が集まらなければ、また次次回になるかも、という焦りもあり、
家族皆で協議の末、ペットショップで購入する事にしました。
ペットの本を読み、「ペットを購入する時の参考として、何匹か居る
檻の中で、声を掛けて最後に近づくわんちゃんが、性格が慎重で
良いわんちゃんです。」という一行が、妙に頭に残りました。
ペットショップの檻に、3匹のシベリアンハスキーが居ました。
初めに寄って来たのは、両目が黒い子、次がバイアイ(右目が
ブルー・左目が金色)の子、そして、最後にのそのそと近づいて
来たのが、デイジーでした。
彼女は、宝石のアクアマリンの色を連想させる、それはそれは
美しい透き通るブルーの両目をしていて、私の眼を下の方から
覗う眼差しで近寄ってきました。
(注:日射の加減で瞳孔の大きさは変化します)
この出会いから12年半、デイジーと私(二人の娘達も其々に)は、
共に人生を歩みました。
彼女の首に首輪を取り付けて、私が用意する食事で、生命を繋ぎ、
リード(引き綱)という一本の綱で、地球をひと回りしたのでは?
と思う程の距離を、お散歩で共に歩いたのでした。
離婚後の地震の被災に拠る転居(半壊の家屋の中、一人で壊れた
家財道具を処分)・親権争い・実家の家業(家の抵当権)争い・
子供の受けたいじめ問題・ 母親の難病看護・父親の介護・家庭事情
に因るオンオフのパート就労。
デイジーと過ごした日々は、毎日が投げ出したくなる様な
叫びの日々でした。
お散歩で、彼女は、私の苦しみの言葉を全て聞いてくれました。
彼女がいなければ、私と娘達は、世間の荒波に遭難していたと
思います。
二人の娘達もデイジーを姉妹のように慈しみ可愛がりました。
私達の3人の誰かが、毎日、必ずデイジーにご飯を与えなくては
なりません。
地震後5年間、周囲の反対の中、実家の庭にデイジーを置かせて
貰っていたので、 賃貸マンションから、徒歩10分、それこそ、
雨の日風の日雪の日、毎日毎日デイジーの元へ通い、ご飯を与え、
悪天候以外は、例え夜中になってもお散歩に 行きました。
その後の展開で、実家で両親と同居していた兄一家は、家を購入し
転居しましたので、また、私の両親と私と二人の娘達の5人での
生活が実家で始まりました。
漸く、デイジーと一緒に暮らせる日が戻って来ました。
愛しい者との離れ離れの生活が、どれ程辛いものか、また一緒に
暮らせるようになってみて、その有難さを、当たり前の日常を、
神様に感謝しました。
ドアを開けると、デイジーがいる。声を掛けると足音が聞こえて、
傍に来てくれる。 抱きしめると厭がって逃げて行ってしまう。
そのくせ、直ぐに戻ってきて私の足元から円らな瞳で見上げます。
12年以上も傍にいて、何で、私とお話できないのでしょうか?
ひと言で良いから、人間の言葉でお話をしてみたかった。
教えて欲しかった。 『デイジー、貴女は私と出会って幸せだった?』
貴女程素敵で魅力的で賢いわんちゃんなら、もっともっと、裕福で、
貴女を可愛がって大切にしてくれた飼い主さんと、楽しく暮らせた
筈よね。
私と出会ったばかりに、辛い一生を過ごさせてしまってごめんなさい。
私は貴女のお陰で、辛い日々を乗り越える事ができました。
デイジー、有難う。
22日の月曜日に、仕事がお休みだった次女の運転で、デイジーの
眠る宝塚の動物霊苑へお参りに行きました。
好物だった、チキンを朝から煮て、小さな容器に入れて持参しました。
大粒の雨にどんよりとした空の中、供養塔から見える甲山を見て、
「お母さん、デイジーのお墓近くて良かったね。」と娘が言い、暫し、
二人で灰色の空を見つめていました。